HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



「とにかく、君はまだ未成年だし、若い女の子があてもなくフラフラしてるのは良くない。ちゃんと帰ろう」


僕が説明するも、結ちゃんは首を横に振る。


「イヤ。帰らない。今日は先生のところに泊まる」


「そうは言ってもね……」


と言いかけて、は!?と目を開いた。


いやいや…何言っちゃってるの、この子は。


「ダメに決まってるでしょう?それこそ若い女の子がほとんど初対面の、得体の知れない男のところに泊まるなんて言っちゃいけません」


僕が咎めるように言うと、


「ぷっ」


結ちゃんは唐突に吹き出して笑った。


「先生真面目?ってか自分で得体が知れないって言う?」


「…あのねぇ。こう見えても僕は君より大人で、ついでに教師でもあるの。


そんな立場でありながら未成年者をほいほい泊めるわけにはいかないの」


呆れながら言うと、


「あたしより大人の人でも、『泊まりに来る?』って言う人は大勢いるよ?それに教師ったって、あたしは先生の教え子じゃないし」


「そうかもしれないけど、倫理の問題だろ?僕は君より長い年数生きてきて、それなりに人生経験もしてきた。


して良いことと悪いことぐらいの判別ぐらいつけられるし、つけられないといけないんだよ」


実際、僕は前科者だ。雅と付き合う以前の話とはいえ、一夜限りの男女の関係があった。


でもあのときエマさんは成人してたし、状況が違う。


そして僕は同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。


「だから君は…」


「冗談だよ」


僕の言葉を遮って結ちゃんは軽く笑い声をたてながら席を立ち上がった。


「え?冗談……」


「ちょっと先生をからかっただけ。飼い犬のモカのごはんあげなきゃいけないし。いつまでも家に帰らないわけいかないし。


困らせてごめんなさい」





結ちゃんは寂しそうに笑った。





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