HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「え―――……?」
乃亜が驚いたように目を開いて、あたしと保健医を凝視する。
「おい!何言い出すんだよ!」
と保健医が小声であたしに怒鳴る。
「黙っててよ」
短く命令すると、保健医は黙り込んだ。
「先生はあたしんちに泊まったの。“神代先生”とも別れちゃったし、色々慰めてくれたの」
「何で……雅……」
最初、乃亜は動揺を押し隠せないと言った感じで瞳を揺らしながらあたしを見てきたけど、
「ホントなんですか、先生?」
と質問の相手を保健医に変えた。
保健医はあたしの嘘に付き合って……か、どうか知らないけど、軽く肩をすくめた。
「どうして、雅…あんなに神代先生のこと好きだったのに?」
「錯覚だったの。あたしが神代先生を好きだと思ってた気持ちは。
林先生とそうなって、気付いた。あたし別に神代先生じゃなくても良かったって」
「でも、先生は奥さんだって居るんだよ!子供だって…」
「だから一回だけだよ。青春の思い出ってヤツ?
別に林先生を好きなわけじゃないし、いい経験になったかな。って程度。行こ、先生」
あたしは呆然と立ち尽くす乃亜を置いて、保健医の手を引っ張った。
「あ…?ああ…」
保健医は何か言いたそうにしてたが、あたしは強引にその手を引っ張って駅への道へと急いだ。