HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


―――



「…いいのかよ。楠、ショック受けてたみたいだぜ?」


電車に揺られながら、保健医が心配そうに、と言うか呆れたように吐息をついた。


「いいよ。乃亜に嫌われても恨まれても今はいい」


「…恨まれても…って、どこまで大げさよ」


「恨まれるかも。乃亜は先生のこと気に入ってるっぽいし」


「それは分からんが。


お前が楠を遠ざけようとしたのは分かったけど、でもちょっと荒療治過ぎないか?」


荒療治ぐらいがいいんだよ。


あたしは乃亜が裏切ったとは思ってない。だから昨日の件を知ったら、きっとまたあたしを助けようとしてくれる。


だけどそれはできない。


今度こそ、乃亜を巻き込むかもしれないからだ。


それだけは何としてでも阻止しなければならない。




「すべてのキーは久米が握っている。



あいつは、あたしの知らないことをたくさん知ってる。



久米の条件を飲むのが




近道だ」





あたしは親指の爪を噛んだ。





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