HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



騒ぎを聞きつけたのか、遠くの方で何事か乃亜と梶も姿を現した。


「嘘……久米くん、嘘だよね…」


女子たちが不安そうに久米を見上げて、


「やっぱ顔!久米くんてそう言う人だったの?」と非難するような声も聞こえる。





「本当だよ。俺は鬼頭さんが好きだ。


少なくとも集団でこそこそ陰口しか叩けない君たちより、


一人でもいつもまっすぐな彼女の方が






魅力的だ」





久米の言葉に女子達は恥じ入ったように顔を赤らめて、顔を俯かせる。



「俺が好きになった理由は彼女の顔や体じゃない。


彼女のまっすぐな力強い生き方に




惚れたんだ。



彼女は淫乱なんかじゃない。




ただ一人を一途に愛することができる




純粋で心優しい人だ。




彼女のことを知らずに、影でこそこそするな。





訂正しろ」




久米―――……


そんな風に―――思ってたの……




久米が再び男子の一人に詰め寄り、覗き込むように睨むと、男子はたじろいだように身を後退させた。



まただ



久米の視線。




それは




催眠術のような







抗えない強い視線。








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