HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




こんなこと前にもあった。


そう―――…随分と前……もう何年も―――…




『どうしても許せなかったんだ。あいつら鬼頭さんを変な目で見てさ』

「訂正しろ」




そうだ―――





ふいに美術バカの言葉を思い出す。


美術バカもクラスメイトの男子のくだらない話にキレたんだっけ。


美術バカの華奢な後ろ姿が、久米のすらりとした背中に重なる。




あんたやっぱり―――美術バカ……?


そう思うと、


ズキリ!と頭に痛みが走った。


また…


まただ。



思い出そうとすると、それを阻むように、拒むように頭痛が襲ってくる。


「………っ」


あたしは額を押さえた。


割れるような頭痛を感じて、ふいに窓ガラスに映った自分を見ると、窓ガラスの中のあたしは、



またもあざけるような不敵な笑みを浮かべていた。






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