HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
軽く頭を振って、窓ガラスから目を逸らすと
あたしは痛む額を気にしながら久米に向かって行った。
「久米…」
久米の肩に手を置くと、久米どころかA組の連中も揃ってあたしを注目してきた。
「……鬼頭さん…」
久米が目を開いてあたしを凝視する。
「庇ってくれてありがとう。でも分かってくれなくてもいい。
あたしを知ってくれてる人が一人だけでもいればそれで充分だから」
久米の肩から手を滑らせると、あたしは久米の腕を引き寄せた。
久米が益々驚いたように目をまばたき、あたしを見下ろしてきた。
そんなあたしたちの様子を堤内が忌々しそうに唇を噛んで睨んでくる。
あたしもその視線に無言で睨み返した。
「あんたらには負けないから」
はっきりとそう言ってやると、堤内をはじめとするA組連中は眉を吊り上げた。
唯一根岸だけは相変わらずの暗い表情で俯いて、もじもじとつま先を合わせている。
「すっげぇ。女同士の闘い?」
「久米くんを取り合って??」
「男冥利に尽きるっての?」
「ってか久米くんにあんなこと言われたい!」
「ってか久米と鬼頭さんて付き合ってんの?」
とあちこちで、ひそひそと噂話が聞こえる。
「あたしたちは負けるつもりはない。あんたらもせこい手使ってないで、正々堂々と勝負しな」
もう一度言ってやると、A組連中たちは再び忌々しそうに唇を噛んだ。