HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「お前たち、何をやってるんだ。ここは廊下だぞ!」
騒ぎを聞きつけたのか、A組担任の石原が眉を吊り上げて向かってくる。
「ちょっとどいて!通してくれ」
反対側から―――あたしたちの騒ぎを面白がってやじうまのように群がった生徒たちを掻き分けて水月も姿を現す。
「鬼頭……久米、どうしたんだ」
水月が心配そうに駆け寄ってくる。
「何があったと言うんだね」
石原もA組生徒たちに事情を聞いている。
「先に手を出したのはD組ですよ」とA組男子の一人がにやにや笑いながら石原に答えてる。
「お前らが鬼頭さんを悪く言ったからだろ!」
久米も負けじと言い返す。
「久米!落ち着きなさい」
水月が久米の肩を引いて、A組連中の前に立ちふさがる。
石原はやじうまで集まった生徒の一人に事情を聞いて、確かに久米が先にA組男子のネクタイに手を掛けたことを知ると眉を吊り上げた。
「神代先生、生徒の教育がなってないんじゃないですか。久米は成績優秀とは言え、やはり問題児クラスの生徒なだけある」
ふん、と鼻息を吐いて石原が腕を組み、
「神代先生は関係ない」
あたしが石原を睨んだ。
それを制するように水月があたしたちの前に立ちふさがり、
「確かに手を出したのは久米かもしれないが、彼は理由もなしに一方的に手を上げるような生徒じゃない。
久米だけじゃない。
うちの生徒はみんなそうです。
久米が怒るようなことを言い出したのは、そちらからじゃないんですか?」
と低い声で唸るように答えた。