HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「卑怯な手…?」
石原の眉がぴくりと動いた。
「私がいつ卑怯な手を使ったと言うんですか」
「身に覚えはないと?知らばっくれてるんですか?」
水月が声を低めると、石原は不機嫌そうに腕を組んだ。
「知らばっくれるもなにも、私がいつ卑怯な手を使ったと言うんですか。どうしてそう思うんですか」
「別に、そう言い切るならそれでいいですよ」
水月も声を低めると、
「とにかく、うちは負けるつもりはないですから。それだけ覚えておいてください」
「A組だって負けるつもりはありませんよ」
水月と石原が対峙したまま空中で火花を散らし、やがて同じタイミングで顔を背けた。
「行こう。鬼頭、久米。君たちも、もうすぐ授業がはじまる。
教室に戻りなさい」
水月がやじうまで集まった生徒たちをぐるりと見渡すと、生徒たちは慌てて教室に入って行った。
あたしは水月に促されるまま、A組とは反対方向に歩き出したけれど
ちょっと気になって後ろを振り向くと、
同じように気になっていたのか、根岸と目が合った。
根岸はあたしと視線が合うと、慌てて目を逸らしぞろぞろと帰っていくA組連中たちのあとを慌てて追った。
根岸―――……