HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



ドレスは黒い色がメインで、所々ゴールドの刺繍やレースが上品に飾られている。


ウェストからふわふわのボリュームのあるスカートが広がっていて、結構豪華だし。


以前演劇部でシェイクスピアの『オセロ(シェイクスピアの四大悲劇の一つ)』で演じた衣装らしいけど、


どうやらその『オセロ』評判があまり良くなかったらしい。


1シーズン公演をして、その後このドレスはどの劇にも使われず眠ったままだったみたい。


しかし…


着るのが大変って久米の意味がようやく分かったよ。


「本格的」とも言ってたな。


ドレスの上半身はかなり体のラインに沿ったつくりになっていて、その下にコルセットを着用するタイプのもの。


コルセットも本格的なもので、背中で編み上げの紐で結ぶタイプ。


ってかこれ一人で着られないじゃん。と言うことで今回は家政科の女子が着せるのを手伝ってくれた。


「鬼頭さんウェストほっそいね!コルセットなしでもいけるんじゃん?」


と家政科女子はあたしのすぐ後ろでコルセットの紐をぎゅっと締めてしみじみ。


締められる方も苦しいけど、締める方もかなりの力がいるみたい。


こんなのできれば無しでいきたいよ。締め付けられてるから息苦しいし。


でもコルセットのお陰かな。ドレスがきれいに映える。


着替え終わった頃を見計らって久米が被服教室にひょっこり顔を出した。


「あ、いいじゃん♪」


あたしのドレスを見て久米が頬を綻ばせる。


「まぁ確かに?本格的だけど、なんか華に欠ける気がするんだよね」


全身を写す鏡の前であたしは腕を組んだ。


「色が黒だからかな。


舞台映えするように金色が混ざってるけど、やっぱり堤内さんのドレスに比べるとどうしてもインパクトが劣るな」


すぐ隣で久米も腕を組んで目を細めている。




―――インパクト…






< 619 / 841 >

この作品をシェア

pagetop