HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「インパクトがあれば人目に付くってことだよね?」
あたしがドレスの裾を握って久米に問いかけると、
「え、うん…まぁ」
と久米が目をぱちぱち。だけどすぐに
「どうするの?」と疑り深い目であたしを見てくる。
「やり直して」
あたしは久米を見据えた。
「は?どこをどうやって?」
「このひらひらの袖を全部とっぱらって、ビスチェドレスにするの」
「ビスチェ…」
久米がまたも目をぱちぱちさせて、
「確かに…露出は多いけど鬼頭さんなら着こなせるかな…」と答え辛そうにして、ちょっと視線を遠くに彷徨わせている。
「コルセットのお陰で胸元も華やかになるだろうし、そのくっきりした鎖骨も目立つし、いいかもねそのアイデア」
細かい調整をしてくれていた家政科女子が他意もなくさらりと言うと、
久米ははっきりと顔を赤くして、ぱっと顔を逸らした。
あんたが照れてどうするんだよ。
と突っ込みたかったけれど、それはスルーして
「それでドレスの裾をもっと派手にしてさ」
「それはいいアイデアかもしれないけど、今から直すにはさすがに無理があるよ。あたしたちも出し物の準備があるし」
とあたしの足元でかがんで裾をなおしていた家政科女子が申し訳無さそうに顔を上げた。
「いいよ、さすがに悪いもん。あとはあたしたちで何とかするし。
ここまで作ってくれてありがとう」
お礼を言うと、家政科女子はちょっと眉を寄せて微苦笑。
「ごめんね、協力できなくて」
「いや、お礼を言うのはむしろあたしたちの方で」
あたしが無表情に答えると、家政科女子ははにかんだように笑った。
「鬼頭さんてもっととっつきにくい人かと思ったら案外そうでもないんだね」
また“とっつにくい”と言われてしまった。
まぁ当たってるだけに何も言い返せないけど。
「ねぇ迷惑ついでにちょっとお願いしていい?」
あたしの質問に家政科女子が首を傾げた。