HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
見間違い?それとも似てるだけ?
けれどキャップのツバに、あの薔薇のシールと同じものと思われる缶バッジが鈍い光を湛えていて、これは単なる偶然とは思えなかった。
「ね、これいつ頃の写真?」と再び聞くと
「えっと…あ、確か今年の春…3月ぐらいだったかな。春休みが終わる頃で、テスト間近だったけど、近くのホールだったしどうしても行きたくて」と岩田さんは悪戯が見つかった子供のようにちらりと舌を出す。
3月―――……
あたしがその画面を凝視していると
「…その写真がどうしたの?変なものでも映ってる?」と岩田さんが心配そうに聞いてきて
「ううん、ごめん変な態度取って」とあたしはスマホを岩田さんに戻した。
「ところで、ねぇ森本さんてどこに行ったか知ってる?」そう聞くと、岩田さんは目をパチパチさせ、すぐに森本さんの席を見て、首を捻る。
「さぁ…そう言えばいないね」
「朝の授業が始まる前からいなくなっちゃったんだよね」
「え?そーなの?全然気付かなかったー…」と岩田さんは文字通り興味が無さそうだ。
薔薇のシールを見て顔色を変えた森本さん。
男がキャップに付けていた薔薇の缶バッジ。
何だか色々とんとん拍子に行きすぎだ。
けど、これって何かのメッセージなのかもしれない。
あまりにも真剣な顔つきだったのか、岩田さんが
「鬼頭さん、あの……!」
意を決したように岩田さんが眉を寄せて聞いてきたけど
それとほぼ同時にホームルームがはじまる鐘の音が鳴って、水月が教室に入ってきたのを知ると、岩田さんは言葉を飲み込んだ。