HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
いっそのこと全て話してしまいたかった。でもそれは出来ない。
話てしまうと、結ちゃんを本当の意味で巻きこむことになる。それを避けたかった。何にせよ、ストーカー犯は僕と結ちゃんのことも調べ上げてる。雅は裏で糸を引いている黒幕が居ると言った。その人間は恐ろしく頭がキレる人間だと。あの雅や久米が手こずってるぐらいだ。雅の見立ては悪い意味で当たっていたことになる。
危険過ぎる。絶対、結ちゃんだけは巻きこめない。
僕は全て吐露してしまおうと思っていたすぐ傍まで出かかった言葉を飲み込んだ。結局、大した説明もできず、だから分かってもらうことなんてできず。
「……ごめんなさい、あたし…今日、超感じ悪い…」
結ちゃんは前髪をぐしゃりと掻き揚げ、今にも泣きそうに瞳を揺らし唇を噛んだ。
「……いや」もっと気の利いた言葉で彼女の気持ちに応えるべきだったが、そうできなかった。これを単に不器用と言うのか、それともこれは僕の完全なる偽善なのか…
それこそ僕の内部は複雑だ。
結局、僕の気持ちを最後までちゃんと伝えることもできず、森本の様子も聞きだせず、消化不良な気持ちだけを残して、僕たちはファミレスを出ることになった。結ちゃんのオムライスは半分程残っていたが、それすら見えてるのかどうかもあやふやで彼女はその後スプーンを握ることはなかった。
会計を済ませ、駐車場の前で
「今日は御馳走様でした。それじゃ」と言って結ちゃんは踵を返す。
「ちょっ!ちょっと待って!送っていく」と僕が慌てて彼女の腕を掴むと、結ちゃんはちょっと困ったように眉を寄せ
「ごめん……あたし、今日は先生と居られない」
「……うん…僕が無神経なこと言ってるって分かってる……でも…不審者が居るから…心配なんだ」ストーカー犯がどこで狙ってるか分からない、そう説明できないもどかしさから僕の言葉はやたらと早口になった。
よっぽど緊迫した表情をしていたのだろう、結ちゃんはしぶしぶ頷き
「先生って律儀だよね…」と目を細め、結局は僕の車に乗ってくれることになった。