HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


とは言ったものの、中川家は森本家と違った意味で騒がしい、訂正、賑やかだった。


「ちょっと!神代先生が来てるって本当!」


ドタバタ


慌ただしい足音が聞こえて、階段から降りてきたのは中川のお姉さんだろう、二十歳前後の子だった。結ちゃんと同じ年代に思えた。しかし結ちゃんとは違って派手めな化粧と、明るい色合いが派手なミニスカートにカットソーと言う姿はいかにも今風と言う感じがする。


「ぅわ!ホンモノ」とお姉さんは一言漏らし慌てて両手で口を覆う。


その言葉にどう反応していいのか戸惑った。まるでアイドルか何かに会ったような反応だ。


「あ、ごめん。これ、上のねーちゃん」と中川は呆れたように紹介してきて


「はじめまして。中川…くんの担任の神代です」と名乗ると


「知ってます~♪」とお姉さんは声のトーンを1トーン上げてにこにこ。


「てか健一、あんた何かやらかしたの?」とお姉さんはすぐに声を潜めて


「何もやってねぇよ、偶然会っただけ」と中川が鬱陶しそうに言い、


「ちょっと色々ありまして、雨に濡れたので中川……くんがタオルを貸してくれるって申し出てくれたので厚意に甘えて」と僕が慌てて説明すると


「そうなんですか~風邪ひいちゃうと大変!」とお姉さんが駆け寄ってくる。


その隣で中川が


「何だよ、そのよそ行きの声。キモいつうの」と白い目。


「うっさい!」と中川のお姉さんは中川をひと睨み。


決して良好とは言い難いが、少なくとも森本家のように冷え切った関係ではないことは確かだ。


「あの、タオルを借りたらすぐお暇しますので」と仲を仲裁するように申し出ると


「ゆっくりしていってください♪」とお姉さんはにっこり。


このあからさまな好意に若干引き腰になりながら、何とか笑い、僕は頷いた。



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