HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
玄関口で中川からタオルを受け取る。ワイシャツの胸ポケットに入れていたケータイも水滴がついていたが、確認するとちゃんと作動はした。イカれてないみたいでほっとした。それを靴箱に置かさせてもらった。
聞くと中川のお母さんは今日は主婦友との飲み会で、お父さんはまだ仕事から帰ってきてないらしい。下のお姉さんもお母さんと同じく大学の友達と飲み会みたいだ。
家には上のお姉さんと中川だけ。
「ところで、どうしたんですか?健一の素行が悪すぎて家庭訪問とか?」
とズケズケと聞かれて僕は曖昧に笑った。
「だから違げぇって。さっき偶然会っただけ」と中川が思いっきり顔をしかめる。
「偶然…?」と中川のお姉さんが首を傾け
「あ、僕、斜向かいの森本……さんの担任でもありまして」
「森本さん?そうなの?妹の方の担任?健一そうだったの」とお姉さんは目をぱちぱち。
「別に話すことじゃねぇだろ」と中川は鬱陶しそうに手を払う素振り。
「あたし、森本さんの…お姉さん?の方と同小だったんですよ~、あの子元気ですか?あ、でも妹さんの方だったら分かんないか」
「え……?結香さん…の?」
「そうそう、そう言う名前だった」
お姉さんは手をぽんと打つ。
「でも中学は有名私立に行っちゃってうちらバラバラになったからその後どうしてるのか分かんなくて。何て言うの?あそこのお母さんがすっごい教育ママで」とお姉さんも苦笑いで腕を組む。
「ここら辺じゃ有名だよな」と中川も苦笑いでお姉さんを見て
「え…でも、森本と中川は同じ中学だって…」中川の話振りからすると地元の公立校だと言うことが何となく分かる。
「うん、そうだけど。確かに考えてみれば変な話だよな~、姉は有名私立で妹は地元の公立で…ま、俺はあんま気にしてなかったけど。てかクラス一緒だったの2年生だけだったし。いっつも一人で図書室にいたな」
「あ、お姉さん?の方もそうだった。大人しくて目立たない。でも結構男子から人気あったんだよね。ま、結構可愛いし性格も良かったしね」
「妹とは逆だよな。最近派手になってきたけど、地味で暗いヤツだった。実際去年までもそうだったし、今はツンツンしてお高くとまってる感じ」
中川が「森本エミナ」を指しているのは分かったが。