君のためにできること
なつきの病室の前に立ち、ノックをする。


中からはなつきの元気な声が聞こえてきた。


ドアをゆっくり開けた。


「優!」


なつきはベッドの上で、笑っていた。寝巻き姿がやけに、痛々しかった。


「来てくれたんだ?ありがとう!」


「その調子だと、元気ありあまってるみたいだな」


俺も微笑み、椅子に座った。


なつきはつまらなそうな顔をする。


「だって、病院って退屈なんだもん。早く遊びたいなあ、なんて思って」


なつきは窓の外に視線を投げた。


「すぐ、退院できるよ。ただの検査入院だろ」


「たぶんね」と、なつきは言った。


「そうそう、また忘れるところだった。はい、誕生日プレゼント」


俺は持ってきたプレゼントを渡した。


「え?あ・・・・・・ありがと」


なつきは、驚いたように俺の顔を見て、プレゼントを愛しそうに抱いた。


「このまま、時間が止まればいいのにな。そうすれば優とずっといれるのに」


複雑な気分だった。沈黙だけが部屋の中を支配していた。


なつきが、俺の顔に近づいてきた。


「ねえ、キスして」


俺の心臓が早鐘を打つ。なつきは、真剣な眼差しで俺を見ている。


俺は、なつきに近寄った。


その時・・・ドアをノックする音がした。


俺は、ドアのほうを振り返った。
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