揺れない瞳
「今更不破さんのウェディングドレスは着ないとか言うなよ。
お前があのドレスを着なきゃ結婚しないって言うからこうして頼んでるんだ。
今更ぐだぐだ言うなよ」

「ちょっと……本気で言ってるわけ?あの綺麗なウェディングドレスは確かに素敵だし着てみたいって思うけど、そうじゃないでしょ。
私が言いたかったのはそうじゃない」

「……お前が何をどう言ったって、俺はお前と結婚するから」

「だから、どうしてちゃんと聞いてくれないのよ。私が言いたいのはね、忍が……あ。……ごめんなさい」

二人の会話がいつまで続くのかな、とぼんやり考えながら、口を挟むことなんてできずに向かいの席でただただ見ていた私に気づいた紗代子さん。
途端に赤くなった顔を私に向けて慌てた。

「ほら、忍がわかってくれないから、不破さんびっくりしてるじゃない。
ごめんなさいね。私達、いつもこうなんだ……って言い訳だね。
巻き込んじゃってごめんなさい」

何度も私に頭を下げてくれる紗代子さんと、隣で不機嫌な顔を隠そうともしない川原さん。どうして二人の喧嘩に私が巻き込まれているのかも、これから私はどうしたらいいのかもわからないまま、

「いえ……いえ……」

と意味のない返事しかできなかった。

結婚前で色々もめてる原因の一つが私の作ったウェディングドレスだろうことは予想できて、紗代子さんの気持ちを川原さんは性格にくみ取っていないようで。

なんだか不穏な空気さえ漂うけれど、川原さんの発する言葉を聞いていると紗代子さんへの強い想いが見えてくる。

「で?紗代子は不破さんの作ったウェディングドレスを着るの?着ないの?どっちにしたって結婚する事は決定事項だから変えないからな」

……やっぱり。
紗代子さんがどう言ったって、川原さんは彼女を手離すなんて考えられないみたいだし、川原さん自身が紗代子さんにどっぷりと甘えてるようにも見える。









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