「サキ、唐辛子は買ったか?」

買い物リストを見ながら、シュウが言った。


旅をしているわけだから、毎回立ち寄った町での買い物は欠かせない。


「あ、まだ!」

「確かもう無かったよな。早く買って来いよ。」


シュウはリストから目を離さずに言った。


あ、言うのを忘れてたけど、鬼は辛いものが苦手らしい。詳しいことは分からないけど、辛いものを食うと鬼を制御できるみたいなんだ。




オレは軽く頷くと向きを変え、調味料を売っている店へと急いだ。




………!!




すると


上から殺気が……−!!





何かくる…!!


何かは分からないけど、振り向いたら当たる…!


オレは瞬時にそれを悟った。



じいちゃんに鍛えられたお陰で、そういう類のものへの反応が敏感になった。




オレは素早くその場にしゃがみ込み、右に避けた。



オレが避けると同時に、オレがいた場所に誰かが勢いよく降って来た。


その場にズドーン!と何かが爆発したような地響きと地揺れが起こった。





「さすがだな…。オレの殺気に気付いただけじゃなく、それを避けるなんてな。」


白く砂埃が舞う中、男の声が聞こえた。



「誰だ。」

オレは見えない相手に睨みを効かせながら言った。




「アンタを狙う者だ……。」

まだ砂埃のせいで表情は分からないが、黒いシルエットとして男の体全体がぼやけて映し出された。


体格からして大男ではないのは確かだ。身長もオレより少し低め。




「オレを狙う…!?何故そんなことをされなきゃいけない!」


「あれ〜?狙われる自覚ないのか?」


男はクスクスと笑いながらこちらに歩いて来る。


「自覚だと?」


「アンタ、オレらの中では有名人だぜ、かなりの。」






やっと埃が晴れて、男の顔がはっきりと映し出された。


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