「何故お前みたいな賞金稼ぎが雇われなくちゃいけないんだ!?」

黒い集団への怒りで自然と息が荒くなる。

「…オレも詳しくは知らされてないんでね。お前に賞金が賭けられて以来、…8年間か…?ずっとオレたちはお前を追っていたんだ。」

「オレたち…?」

「…そう、オレには相棒がいるんだよ。」

男はそう言ってニヤリと笑うと、左手の親指と人差し指で輪を作り、口にくわえた。そして吸い込んだ空気を思いきり吹いた。

<ピィーーーッ>

周囲に男の口笛が轟いた。



「…相棒とやらを呼んだのか?」

「ああ。
あんたを倒すには少し用心した方がいいと思ってな。」

男は辺りを軽く見回しながら口にくわえた指をほどいた。


「…悪いけど、オレにも相棒がいるから。多分、今のお前の合図で気付いたと思う。」

「そうなのか?…それは計算外だったな〜。」

オレに相棒がいることでオレを仕留めづらくなるはずなのに、男は大して焦る様子もなく、ただ辺りに気を配るだけだ。

自分の腕に自信があるのか…?
…それとも、その相棒とやらが強いやつなのだろうか…?


すると、さっきまではただのそよ風だったのに、徐々に風が強くなり始めた。かすかだが、周囲の空気も重くなったように感じる…。

「やっと来たか…。」

男がそう呟き、上を見上げると……− 。


肉眼でも分かるくらいの竜巻を身に纏った女が降ってきた。
男と同じ髪色をしていて、背は男より少し低い。

この女が相棒なのか…!?


女とオレとの距離は大体5メートルくらい。なのに、オレの背後に構える店々の看板は今にも吹き飛ばされそうなほど。
もちろん、オレの髪や服はバタバタと音をたてて振り乱れている。

それに対して、女の服などには全くそれが見られない。

竜巻の目にいるからなのか…?


オレの視線に気付いたのか、女は男と軽く会話をかわすと、スッとオレを見た。

「こんにちは、私がアユサの姉のアイビィです。」

そう言い、女はニッコリ笑う。


あゆさ…?
……って、誰…?


「オレだ…。」

オレの心を読んだのか、男がそう呟いた。


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