シェリの旅路
「正反対な相手に惹かれるって

言うわよね」


元婚約者が医者の跡継ぎだった

フランは、社交性を

身につけるためにオペラや

オーケストラの公演会に

行くよう養父に言われ、

デートも兼ねて元婚約者と

足を運んだ。


そのため、少し芸術界に

詳しいフランは

もしやあのバイオリニストかと

思い浮かべられる人物がいた。


昨日知り合ったばかりの人間の

元恋人が頭に浮かんだことが

滑稽だった。


「何よ?にやついて」


フランの様子を見て

ヴァネッサは一瞬むっとしたが

気を取り直して話を続ける。


「付き合いはじめて

わりとすぐにコンクールに

出たの。もちろん、コンクール
ではライバルよ。

あたしは彼への愛を込めた

自分の曲で優勝、彼は一般的な

曲を弾いて5位。

彼に当てた曲で優勝したん

だから当然彼も喜んでくれると

思ったけど、あたしの

この才能に嫉妬よ。

心の狭さを軽蔑して別れたけど

彼じゃあたしの足元にも

及ばなかったわ!おーほっほ!」


ヴァネッサはそこまで言って

高笑いをした。

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