キミ色
「適当な事言うなよ。」


鼻で笑いとばし、冷静さを取り戻す。


嘘だろ?
だって時雨には―…


「本気って言ったら?」


時雨の楽しそうな目が俺の顔をとらえる。


ふざけんじゃねぇ。


「冗談キツいから。」


俺はそう言って時雨のいる方とは逆側の地面に寝ころんだ。


キツい冗談は止めてくれよ。
時雨の冗談は時に幅を越えすぎるから困る。


何回本気にして騙された事か…



でも、次に時雨の口から出てきた言葉は俺の耳を疑わせるものだった―…。





「なぁ、櫂?俺、あの子の彼氏になろっかな…!」



…は?


また、こいつは何を言い出すんだ?


呆れた顔を持ち上げ、時雨の方を向くと時雨は空に視線を合わしながら儚い表情をしていた。


その顔が、どことなく真剣なような気がして…
そんな時雨を見た俺は、背中がぶるっと震えたような気がした。



時雨…
お前は今何を想ってる―…?



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