キミ色
暗い洗面所で携帯がつくのを待つ俺は、空羽の首を見つめていた。
そして、焦る気持ちを抑えながらそっと空羽の首に震える手を近づける。



脈を見つけるために…
怖くて、ずっと確かめられなかった。



俺は経験したことがあるから……



…お願い、振れていて……─



もう…、あんな想いはしたくないから。


ぱっと空羽の顔に視線を映す。
重なる花音の残像…



そっと手をのせた時、もう何も感じなかった…
冷たくなった綺麗な首は、もう鼓動を打ってはいなかった……



…ドクンッ…ドクンッ…



高鳴る鼓動…
死んでしまうんじゃないかと想うぐらい、心臓が激しく波打つ…



ゆっくり、ゆっくりと空羽の首に指を当てる…



…お願い………



「…空羽」



………



…………ドクッ…ドクッ…




少し途切れながらもゆっくりと鼓動が伝わってきた。
空羽の脈はしっかりと振れていた…




< 255 / 323 >

この作品をシェア

pagetop