キミ色
何となく今から始まる事は、わかっていた。
正直言って、そんな気は数ミリもない。



別に蓮を引きずってるとかそんなんじゃなく、ただ単にこの人格がムカつくから。
だって名前も書かないなんて、よっぽど自分に自信がないという事だろ?



そういう意志の弱い奴は、あまり好ましくない。
だって人は、自分に無いものを持ってる人を望むだろ?



…ただ、誰か知りたいんだ。
知らない間に俺のせいで傷つかれるのは、俺だって良い気がしない。




上靴の音で気づいたのか、1人の女の子が正反対の階段から姿を表した。




遠いし、暗いのもあって、さすがに顔までは確認出来ない。
俺は少しだけ歩くスピードをあげて、女の子に近づく。



少し怯えたような表情を見せる彼女。



距離が30mぐらいになった頃だろうか?
ようやく、顔が見えてきた。



小学生のような低い身長に、2つに括っている栗色の巻き髪。



真っ直ぐに俺を捉えるまん丸い瞳。
りんごのように赤い頬。
卵型の小さい輪郭。



……こいつ…。



見た瞬間に唖然としてしまった…



誰だ…こいつ…
こんな奴同級生にいたのか…



……似てる……───



< 5 / 323 >

この作品をシェア

pagetop