Honey Bitter

嫌にでも見える暗い大きな空を見まいとした為か、建設中のビルを見逃すところだった。




灰色のビニールが隙間なく張られた大きな10階建てくらいのビル。




建設中と言うこともありビルの入口の様なところには"立入禁止"と書いてある黄色い看板が立ててある。




黄色い看板に手をかけて手前に引くと驚く程簡単に開いた。




ビルの中に足を踏み入れると、まだ夏だと言うのにやたらと空気が冷たい。




暗闇に目が慣れてくると、至る所に普段私が見ている完成されたビルとは違う事に気付く。




焦げた赤のような色の鉄製の階段を、外から漏れる月明かりを頼りに上ってゆく。




カツン、カツン、カツン。




誰もいない事を示すかの様に、私の足音だけがビル中に広がる。


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