空と砂と恋の時計
「昨日から百合が元気ないから景子も真紀も心配してたよ。原因は――まぁ、言われなくても分かるけど。
悩みとかはさ、話すと楽になるって言うじゃん。百合さえ良かったら話して。相談役ぐらいにはなれると思うから。私も景子も真紀もそんな時の為の友達でしょ」
「……私、私ね、ずっと貴志の事が好きだったの」
「でしょうね。傍から見たって、分かるくらいの恋する乙女だったもん。まぁ、乙女って言葉があんまり百合には似合わないけど」
「……本当に慰めてくれる気ある?」
「冗談だってば。そりゃ見てくれは気丈なお嬢様だけど、中身は普通の女の子だって皆、知ってるよ」
「それって慰められてるのか、いじめられてるのか微妙だよ」
「ほらっほらっ、話が進まないでしょ。百合は貴志君が好きだったんでしょ。それで?」
「それでって言われても……。それだけなんだけど」
「じゃあ、何でそんなに虹が出来そうな勢いで泣いてるの」
「それは、貴志には彼女がいて、でも私、そんな事全然知らなくて、もしかしたら貴志も私の事、好きでいてくれたんじゃないかって思ってて、でもそれが違うんだって気付かされた時、とってもショックで……うぐっ」
「辛かったよね?」
優しく、本当に優しく香里は私を抱きしめてくれた。
制服が濡れちゃうのに、そんな事、気にも留めずにただ優しく。
香里の胸の中にいる私はふと気付いた。
「……どうして、香里まで泣いてるの?」
「だって、百合が可哀相なんだもん。気付いてるかどうか知らないけど、私達、ずっと百合達の事、応援してたんだよ。
百合が貴志君の事、ずっと好きだったって言われなくても百合の態度ですぐに分かった。それなのに、百合が……幸せになれないなんて、そんなの嘘だよ」
今度は私が香里を抱きしめた。
ごめんね。ありがと。香里達のおかげで私はもう大丈夫だから。もう泣かないから。
また明日から、卒業するその時まで四人で楽しく過ごそう。