空と砂と恋の時計
あれから二日が経った。
あの日から一度も屋上に行っていない私は貴志と面と向かう事もなかった。
でも、同じ学校にいるので偶然、見かけるくらいの事はある。
貴志が私に話しかけようとすると、私はすぐに視線を逸らし、貴志を拒否した。非道い事をしてると思う。
でも、もう貴志を友達として見る事は無理なんだよ。ごめんね貴志。
景子達が彼女がいるのに、どうして頻繁に私と接してきたのかと貴志を問い質そうとしたけど、私がそれを止めた。
貴志の彼女が誰かなんて知ったところで私がどうか出来る問題でもない。
何より私の恋はもう終わったのだ。
今日も何の変哲もなく、楽しい学校が終わった。
夕焼けを眺める。そこには大好きな茜色の空があった。
「もうすぐ卒業だよね。今週末はパーっと百合の家でドキッ☆女だらけのお泊り会でもしましょうか」
「それ先週やったよね。そのタイトルも意味不明だし、何でいつも私の家なの?」
「広いからに決まってるでしょう。温室育ちのお嬢様である百合が普通の一軒家にいるのは私達のプライドが許せないのよ。香里の家みたいなアパートなんて以ての外。マンションだったら最低で六本木ヒルズ」
「どうせ家はボロアパートですよ」
いつものように仲良く並び、笑いあう四つの影に、新しく影が一つ重なった。
振り返ると――、そこには貴志がいた。
私の足は一瞬にして凍りつく。庇うようにして三人が私の前に出た。
「あの……」
「はいは~い。ごめんねぇ。百合は私達と帰るから、後輩君は他の子誘ってね」
「景子、良いの」
「でも」
「ありがとう。悪いけど、皆は先に帰ってて」
「良いの?」
私は無言で頷く。