空と砂と恋の時計
皆の背中を見送ると、胸に手を当て、心を落ち着かせる。
丁度良い機会だ。これで貴志と面と向かって話すのも最後だろう。
もう逃げない。私自身に決着をつけよう。
斜陽を浴びる貴志の顔にはいつものあどけなさはなく、稀に見る真剣な大人びた表情だった。
「ちゃんと話すの二日ぶりだね」
「そうね」
「俺、この二日ずっと考えてたんだ。何がいけなかったんだろうって。何が原因で百合さんを怒らせたんだろうって。でも、結局は分からなかった。
百合さん。俺が悪かったんなら謝るよ。知らないところで俺が百合さんを傷付けてたんだったら謝るから」
「貴志は何も悪くないの。私が勝手に貴志の事を好きになって、でもそれが駄目な事だと知って、勝手に嫉妬してたのよ」
「だから、それが訳、分かんないんですって」
「分かってよ。私は貴志が好きなのよ。でも貴志には彼女がいるんだから私がそこに入り込む余地なんてないじゃない!」
もう嫌だ。私は涙を必死に堪えて逃げ出す。
しかし、一瞬にしてがっちりとその腕を掴まれ、止められてしまった。
「離してっ!」
「話はまだ終わってません。待って下さいよ」
「嫌ぁ」
必死に振りほどこうとする。
「待てって!」
「……」
あー、もう最悪だ。
こんな泣きっ面みられるなんて。何でこんな風になっちゃたんだろう。
そもそも私が貴志を好きになった時点で間違ってたのかな。
逃げようとしたけど、もう諦めた。男の力でしっかりと掴まれた腕を女の私ではどう足掻いたって振りほどける訳がない。
「何でさ、百合さんは自分自身に嫉妬してんの?」
「……はい?」
「いや、俺の彼女って他でもない百合さん自身じゃん。それなのに何で好きになったら駄目だとか入り込む余地がないとか訳、分かんない事言ってるの?」
コノヒトコソナニヲイッテンノ?