空と砂と恋の時計


目をパチパチ。口なんかアホの子みたいにポカーンと開いたままで、混乱し過ぎで自分が今、泣くべきか笑うべきか怒るべきか今すぐコンビニかどっかに行って熱いお茶でも買って来て一息つくべきか分からない。


「誰が誰の彼女なの?」

「百合さんが俺のでしょ。そもそも百合さんの方から告白してきてくれたんじゃん」

「妄想っ! それ絶対妄想! 私、そんな事言った憶えない」

「いや、妄想なんかじゃないですって。三日前の昼に確かに言ったじゃないですか。確認もちゃんとしましたし」

三日前?

……思い出した。一瞬で顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。

でも、あの時貴志は……。


「まさか、あの時起きてたの?」

「いや、正直言うと半分寝てたんですけどね、だから百合さんの告白が自分が良い様に見た夢なんじゃないかって確認する為によろしくお願いしますって言ったじゃないですか。そしたら百合さんちゃんと手を握り返してくれましたし」

「まてまてまてまてまて、しばし待って。あの時、寝ぼけてたんじゃ……」

「そんな訳ないじゃないですか。百合さんが手を握り返してくれた時、もう俺一人で舞い上がっちゃって眠気もぶっ飛びましたよ」

「もしかして昼休みが終わった後、その事、誰かに言った?」

「え? はい。丁度、彼女いるのか? って聞いてきた友達がいたんで、別に隠す事でもないかなって思って、一人教えましたね」

そうか。それが景子の彼氏の後輩であり、貴志の友達って訳か……。

そう、全てはすれ違いで起こった悲劇。もとい私の勘違い。


「わっ! ちょっと百合さん」


一気に脱力して腰が抜けた。

ふにゃふにゃ~っと空気が抜けていく風船の様にしぼんでいく私。

ペタンと尻モチをつく。


「パンツ見えますよ」

「見るなよ」


悔しいな。惚れた者負けとはよく言うが私だけ振り回されて泣かされるのはあまりにも不公平だ。何か一発くらい仕返ししてやらないと気がすまない。

あ、そうだ。

ポケットを探る。

――あった。逆転の切り札が。

立ち上がって、乱れた髪を直し、貴志を見据える。


「私、貴志とは付き合ってないわよ」



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