空と砂と恋の時計
あ、貴志ったら固まっちゃってる。もしかしてフラれたなんて思ってるのかな。そんなつもり全然ないのに。
貴志が灰になっちゃう前に次の言葉を早く言わなきゃ。
「確かに私は貴志が好きって言った。貴志もそれに同じ気持ちで返してくれた。でも、私、付き合ってくれなんて一言も言ってないでしょう?」
「ええっ!? そんな」
「ん~? 君は告られっぱなしで悔しい思いをしない男だったのかなぁ? 私だったらリードしてくれるような彼氏が良いな。私だって『待て待てあはは。こっちよ、うふふ』みたいな展開を望む普通の女の子なのに」
「うわっ! 想像つかねぇ。どっちかって言うと『待ちなさい!』の一喝で俺、反射的に身体が硬直しそうなんですけど」
「うるさい」
何で私が追いかける側になってんだ。じゃなくて、そういう話をしたいんじゃない。
ポケットを探り、携帯を取り出す。ストラップを外し、貴志の目の前で掲げて見せた。
「貴志、これ何だか憶えてる?」
「ああ、確か修学旅行で買ったって言ってた願いの叶う砂時計」
「そうそう、でね、この砂時計次の一回で丁度、願いの叶う百往復目なの」
「えっ? でも百合さん、この前、数えてないって……」
「百 往 復 目 なの」
「はい。百往復目です」
凄みを効かせたらすぐに素直になった。
勿論、次が百往復目なんて嘘っぱちだ。
でも、このくらいの嘘は良いよね? 本当に偶然、次が百往復目かもしれないし。
「私の今の願いはね。大好きな人が私に告白してくれる事」
ボッと貴志の顔が赤くなる。
可愛い奴め。でも、女を泣かせた罪はこのくらいじゃ済まないぞ。
何の躊躇いもなく私は手にある砂時計をひっくり返す。
心の準備がまだ出来ていない貴志は前フリもなく実行された行動に驚嘆の色を見せたが、もう遅い。
運命の砂時計は万有引力に抗う事無く、サラサラと流れ落ちていく。
数秒、戸惑いを見せたが、意を決した貴志は覚悟を決め、ゆっくりと口を開く。