好きな人の忘れ方
今日は、土曜日
シフト通りなら、啓太郎は休み
そして、私はやっぱり仕事
だから大体、啓太郎が家に来て泊まって、私が帰って来るまで居る
そんな風に過ごす
けれど、どうやら今日は啓太郎も仕事らしい、きっちりとスーツを着てる
自分の予想が外れた事にすら私は今コイツにイライラしてしまう
「じゃあね」
「・・・・遥(よう)」
「・・・・何?」
無言で私の腕を掴む啓太郎の顔は見れない、勇気がない
言い訳するなとは、言った
謝る必要もないとも言った
だけど、何か言ったら?
無言のまま時間だけが過ぎる
外は大雨で、窓に打ち付ける雨の音だけが部屋に響く
「別に、大丈夫」
「・・・・・」
勢いよく腕を振り払った
空しさと淋しさを必死に飲み込んだまま、私は自分の部屋に立ち尽くす啓太郎を置いて部屋を出る