失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「書類の中身はただの情報だけでは
なかった…そこにはマニュアルが細
かく書かれていた…そしてあの女を
支援していた悪党どものプロフィー
ル…なぜか金目のものはなかった…
通帳や貴金属の類いは誰かに抜かれ
たのか…そもそも私には残そうとは
思わなかったのかはわからなかった
…自分の犯罪能力と犯罪マニュアル
の実効性を量るべく私は実験的に私
をお払い箱にした義父から金を脅し
取る計画を立て実行に移した…自分
を捨てた人間からむしりとることに
良心の呵責は起きなかった…良心な
ど感じたことはそれまでもなかった
が…まとまった金が手に入る頃には
大学を卒業し私は日本へ帰って来る
ことが出来た…なぜか迷いはなかっ
た…遺産を受け取ることも…それを
仕事にすることも」
彼は父親に目をやった
「母親に海外輸出され…せっかく帰
って来たのに今度は父親に返品され
たわけだ…我ながら笑える話だ」
彼の父親は苦々しく言った
「なんて答えて欲しいんだ?…俺の
前で死にたいのか?…勝手なことを
言うな…」
罪悪感と怒りで彼の父親の心が
押し潰されそうに見えた