失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「…あなた…と…一緒…?」



僕は思いもよらない彼の言葉に

一瞬ビクッとした

僕も知らない兄が隠していた

深い闇を暴かれてしまいそうで



「君の兄さんの一番恐れていた罪は

ね…君を無理やり犯したことだよ」



それは

一切想像もつかなかった理由だった

いつも僕の心を見透かす彼が

これだけは間違ってると思った

兄貴が…僕を無理やり犯した…?

何を言ってるんだ…彼は



「それはないよ…間違ってる…兄貴

は絶対に無理やりなんて…しなかっ

た…嫌がるようなことを絶対にしな

かった」

だが彼は続けた

「君が抵抗できなくても?…なにを

されているかわからなくても?…そ

うとも…君にはわからない…例えば

君の兄さんが父親から犯されていて

も父親をどこかで求めてたように…

あれだけ酷い仕打ちをされていても

兄さんがまだ父親を愛することがや

められなかったように…だ…君には

わからない…君は抵抗出来ない相手

を調教したことがない…だろう?」



だが僕の中にはそれに関する

なんの疑いも不信もなかった

僕が兄から愛されていたことに



「兄貴はそれしか愛しかたを知らな

かったんだ…あいつに…父親に小さ

い頃から刻みこまれたのは兄貴のせ

いじゃない!…あいつには愛がなか

った…わかってるでしょ?…同じ行

為だって愛されていれば受け入れら

れるんだ…兄貴の気持ちに僕を傷つ

けようなんて…僕を調教しようなん

て思い…これっぽっちもなかったよ

…それは僕が一番よくわかってる」





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