失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
温かなものが触れたと感じた途端
僕の右手は兄の両手に包まれていた
頭の中が痺れて
なにも考えられなかった
自分の心臓の音が耳に響く
満たされていく
一瞬が永遠に感じられるほど
「ありがとう…変なこと言ってごめ
んね」
兄の言葉で僕は我に返った
僕の手はまだ兄の両手の中にいた
思わず兄を見上げる
「人の温かさにふれていたい…それ
がもし可能なら」
「僕で…いいの…?」
兄はにっこり笑った
「君がいい」
「気持ち悪くないの?」
僕は恐る恐る聞いた
「そんなこと感じてないよ…逆にす
まないと思ってる」
「なぜ?」
「君が悲しむ…仲良くなってもすぐ
にさよならしなきゃならない」
僕の身体が一瞬こわばった