失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「さっきは…ごめん…僕ひどいこと
…言った」
自分の後悔の痛さに耐えられず
僕はベッドに戻った兄に謝っていた
「いいよ…ひどいこと言ったのは私
の方だから」
兄もヘコんだ顔をしてそう言った
「距離感が…わからなくて…君と私
の…」
「僕もだよ…兄貴だけじゃない」
「正直…兄貴と呼ばれるのも…私は
後ろめたさを感じるんだ…君の兄だ
ったことをほんの少しも思い出せな
いのに…」
「それでも兄貴は兄貴だ」
僕がそう言うと兄はうつむいたまま
額に手を当てた
「…って言わなきゃならないところ
なんだけど…」
そうなんだ
兄だけじゃない
僕自身も“兄貴”って
呼んでいいのかって
無理強いしてるようなこの違和感
兄が兄であった…と
過去形でしか
もう
「兄貴だった…正確には…だった…
なんだよ…もう」
うつむいてた兄が僕を見た