ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「わ、ジャングルジムのフレームってこんな細かったっけ」

「だよな。手が大きくなったんだろうけど」

「安定感なくて怖いんだけど! なんでちっちゃい頃は平気で登れたんだろ」

「痛みを知らなかったんだろうなー」


何気ないひとことにドキッとしてしまう。

痛みを知らない頃は私も恋愛に貪欲だったんだけどな、と思っちゃって。


そう思うと八木原くんは強いなーと思いつつ、引き上げてくれる力強い手を見つめてた。


「ホラ、月が近い」


意外に可愛いことを言う八木原くんはやっぱりモテるんだろうなと思った。

つられて上を見上げると半月がくっきりと輝いていた。


「ほんとだ。綺麗」

「でしょー」


普段、こんな風に月をじっくり眺めることなんてない。

こういう心の余裕って案外大事なのかもしれない。
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