ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
部屋まで送ってもらってすぐにバイバイじゃひどいかな。

そう思ってドアを開けたものの中に入れずにいると、八木原くんは私の心を読んだみたいで苦笑した。


「なに、部屋に上げてくれんの?」

「……それはダメ」

「だったら早く中に入って。風邪引くから」

「ありがとう。八木原くん」

「俺に惚れた?」

「……そういうわけじゃないけど」

「けど?」


――思ってたよりずっといい人だった。


そんなのは思わせぶりな台詞だから喉の奥に飲み込んだ。

だってそれは恋愛感情とは違うから。


八木原くんはそこには突っ込まずに、笑って次の誘いを口にした。


「また皆で遊ぼうね」

「皆?」

「水嶋さんとリアちゃんとさ。今度はどっか遊びに行こうよ」
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