ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「アパートここだから。送ってくれてありがとう」


築年数も古いしセキュリティもいまいち不安なマンションと呼べないアパート。

こんなところに住んでるって知られるのが今まではすごく抵抗があった。


光浦さんと付き合っていた頃は特に。


そんな私が水嶋には簡単に部屋に上がられ、八木原くんにもこうしてアパートの前まで送ってもらってしまう。

ずいぶんと図太い女になったな、と心の中で苦笑した。


「部屋の前まで送るよ」

「え、いいよ。大丈夫」

「いーじゃん、ここまで来たら一緒だって」

「一緒じゃないよ」


話しながら八木原くんは階段を上っていってしまうから、慌てて後からついていった。

一瞬、部屋に上がりたいのかなって疑ってしまったけれど、少し考えて八木原くんはセキュリティの甘いこのアパートだから心配してるんだって分かった。


八木原くんってそういう人だ。

意図せずに二人っきりになってしまったけれど、こうして少しでも深く関わるとその人の色んなところが見えてくる。


……きっとリアちゃんと水嶋も。
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