ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「またな」

マンションを出るときにそう言ったのは社交辞令だったのかもしれない。

だけど私の胸は不安でざわざわとした。


明日にでも会えそうな水嶋の態度に違和感を覚えて、タクシーの中で携帯を確認した。


――水嶋隼汰。


酔ってたクセにしっかり番号交換までしてたらしい。


……水嶋はどういうつもりなんだろう。


私のこと、都合の良い女として扱いたいのかな。

酔って簡単に体を許しちゃうような女だと知って。


そんな奴じゃなかったと思うけど……、とそこまで思って自嘲の笑みがこぼれた。

……そんな奴の私が言う台詞じゃないか。

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