ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「企画部って忙しそうだね」

「おー、泊り込みとかザラだしね。上からのプレッシャーハンパないしキツイよね」


キツイよね、という割には笑顔の八木原くんはカプチーノをひと口飲むと「あっま!」と顔をしかめた。

甘いの苦手だったら同じものなんて頼まなきゃいいのに。


八木原くんは砂糖入りだって知らなかったのか、知ってたけどノリで頼んじゃったのか、おそらく後者なんだろうと私は思った。


「それなのに私と話してていいの?」


会社の人とあまり個人的に仲良くなる気はないんだけどな、そんな思いも込めてちょっと咎めるように言ってみる。

だけど八木原くんは「いいの、いいの」と取り合ってくれなかった。


「こうしてる間に良いアイデアが浮かぶかもしれないし。女の子と話すのも貴重なリサーチだよ」

「口が上手いなあ」


スラスラと軽口が出てくる八木原くんに呆れるというより感心してしまう。

きっといろんなことに器用に生きてる人なんだろうなって。
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