ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
そのままエレベーター内は無言になった。


からかわれるのも嫌だけど、水嶋が黙ってるとか逆に居心地が悪い。

息遣いさえ聞こえてきそうな密室の中、私の心音は勝手に加速しだす。


……この間のこと、思い出しちゃうよ……。


息も止まりそうな濃厚な口づけが脳裏に蘇ってきて、呼吸が苦しくなる。

早くロビーについて欲しいとじっと点滅する階数表示を見つめ続けた。


「……吉村がさ」

「ひゃ……っ!」


この空間を居心地が悪いものだと感じていたのは私だけだったみたいで、

あまりに普通に響いた水嶋の声に、私は心臓を掴まれたように驚いて跳びはねた。


「ひゃって、さっきからなんだよ」

「ご、ごめん。ちょっとビックリして」


最初はお化けだと思って、今はまた違う意味でドキッとしたんだけど。

私のそんな心の葛藤なんて知る由もない水嶋は、ビクビクする私にちょっと不機嫌そうだ。


「吉村がさ」

「吉村って……サキちゃん?」

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