一期一会
「いいや、寂しくないよ。あの人とはいっぱい思い出があるからね。もちろん苦しいこと、辛いことはあったけれど、いつもそれを半分にできたわ。嬉しいことは、あの人が居れば二倍になったし……。それにイェオーシュア、おまえがいるからね」
「わたしもおばあちゃんが居て寂しくないよ。お父さんとお母さんがいなくても、おばあちゃんがいるからね」
老婆がイェオーシュアと呼んだ両親は、十年前に家族で山にピクニックに行った折り、不慮の事故で亡くなった。
ピクニックからの帰路の途上、高い谷に挟まれた隘路(あいろ)にさしかかった時、崖崩れが発生して親子三人土砂に飲み込まれたのである。
そこへ偶然にも狩りの途中であった五人の青年が現場に居合わせた。
耳を澄ますと、どこかから子供の泣き声が聞こえてくる……。使命に駆られた彼らの一人が集落に応援を求めるために走り、残りの四人は手分けして土砂をかき分けていく。
捜索すること二十分、はたしてイェオーシュアが見つかった。父親がとっさに小さな彼女を両手で抱え、前方にできるだけ大きく振り投げた為に早く発見されたのだろう。