一期一会
しかしなかなか答えが出てこない。なのでつい無意識に右手が耳をねじってしまう。ついに彼女は考えても仕方ないと諦めて、しばらく男の様子を見物することにした。
今し方、男は弓を構えて練習用の的を見据えている。弦を引き絞り、矢を放つ。一連の動作はどこかぎこちない。矢は飛んでいく。しかし途中でおじぎしては届かなかったり、届いても的からあちこちと外れたり、酷い時はまるで別の木に刺さってしまう具合だ。
見ていた彼女はなぜか歯痒く感じ、たまらず茂みの中から勢いよく顔を出してしまった。その音で男はハッとして視線を向けると、茂みの中には銀色の長い髪をしたイェオーシュアがいた。
時折、木漏れ日が彼女をチラチラと照らし、肩から前に垂れた長い髪は薄紫色に輝いてる。
人はあまりに美しいものを見ると声を失い、身を動かすことを忘れてしまう。特に世の男とはそういうものだ。今ここに彼女を見つめている男もその一人であろう。