空を翔ける一筋の流れ星
黄色い線のぎりぎりに立つと、振っている雨がズボンの裾を濡らす雨の中、新宿行きのホームで急行電車を待っている。


人前では話し掛けるな


俺と空の間には、その決まり事とは違う沈黙が続いていた。



常に沈黙というわけではない。



それなりに会話はあるし、お互いに笑顔になることだってある。



それでも、やはりぎこちない空気が二人には流れていった。

そんな空気が、今の二人にとっていつも通りになろうとしていた。



たかだが五・六分の時間、急行だと一駅なのだが珍しく空いていたので、今にも倒れそうなくらい疲れている人のように目の前の席に座り込んだ。



何もしていないのに、酷く疲れたようだ。



今の俺たちの空気は、正直、そういうふうに感じてしまう。

そう思っていても、何もせずに沈黙を破ろうとせず、口を閉ざしている。

嫌いな性格だとはっきりと口にしていたというのに、今の自分がそんなふうになってしまっていた。

その事実が、また余計に自分を腹立たせていた。



ふと、空に目をやる。



ぼんやりと俺を眺めていて、目が合うと慌ててこれ以上にないくらい全力で顔を背ける。

こちらが気付いていないとでも思っているのだろうか。


お前、その動作を一体何回するんだよ


そう言い掛ける言葉を呑みこみ、心にしまう。

この動作も一体何回しているんだよ。


(全く、呆れた二人だよ)


ため息をつき、窓の外を眺める。



雨の中、津久井道を多くの車やバイクが走っている。

その光景を眺め、また一つため息をつく。



俺、一体何をしているんだろう。
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