空を翔ける一筋の流れ星
教室に入ると授業が始まっているにも関わらず、生徒らしき姿は十人もいなかかった。

普段は必要以上に広いこの教室が満席に近い状態になることを考えれば、どうやら休講の案内を見落としてようだ。



大きくため息をつき、入ってきた扉をもう一度開けて教室を出る。


「あっ」


この教室に向かって全力で走ってくる一葉が見え、ため息が笑いへと変わった。

どうやら休講の案内を見落として、貴重な朝の睡眠時間を削ったのは俺だけではなかった。

そのことが少しだけ気分を晴らしてくれた。


「いいねえ、その走りっぷり」


嫌味をたっぷりと含ませて、教室の扉を開ける。

中を覗いた瞬間、一葉はまるでボクシング漫画のＫＯシーンのように肩から崩れ落ちた。

それを見て、俺は思い切り笑ってみせた。

しかし、同じように遅刻してきて俺は歩いてきたというのに、一葉は全力疾走してくるとは相変わらず真面目な男だ。


「まあまあ、朝の貴重な時間を無駄にした者同士、ここは食堂でも行って朝食といこうや」


肩を叩き、ここから一番近い食堂へと二人で向かう。

全力疾走してきたせいか、一葉の歩く速度はいつも以上に遅いように感じた。
< 91 / 123 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop