デスペリア


「やだぁ、やだぁ!やめてえぇ!」


「えー、なにー、聞こえないー。俺様、やだとかやめてって言葉が聞こえないんだよねー。あ、これじゃ聞こえると言ったもんかっ」


満面の笑みを浮かべて、魔物は手に力を込める。


みし、だなんて聞こえたくない音がミュミュの体から、あり得ない音がして。


「泣きわめけよおぉぉ!盛大にさ!それが俺様にとっての拍手喝采なんだからさあぁぁ!」



――ぶつり。



ぬいぐるみを思い出した。思い出すしかなかった。あまりにも呆気なく、生命とは呆気なく呆気なくあっけなく友達なのに友達なのに大切な大切で毎日笑いあった大切な友達がぬいぐるみに引きちぎられたぬいぐるみにワタだワタなのに白くないぬいぐるみなのに友達じゃないこれはぬいぐるみでミュミュはきっと生きていてミュミュはミュミュはミュミュは――


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