デスペリア
「あ、あ……あ……」
顔に雨のように降り注いだ“異物”に、チルチは言葉を失った。
「は?きゃあ、とか、うわあとかねえの?つまんねー」
予想外だったか魔物が興が冷めたと言わんばかりに、チルチを踏む足に力を込めた。
「あ、ぐっ……か、はっ……」
腹部の圧迫により、くぐもった息を出すも、チルチの眼はずっと虚ろだった。
抵抗しなかったのは全ての力が抜けたからか。生きることを放棄したからか。
放棄、したかった。
「あぐっ……ミュ、ミュ……」
走馬灯とは現実逃避だった。
一緒に散歩し、一緒に食事し、一緒に寝た。笑っていた思い出しか頭に流れない。時折、チルチの頭に“赤いモノ”が出てきたが、違うと否定して、また思い出にすがった。