゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚ 夜の端 。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。

「あたしも見た」

「俺も」

なんて言いだす生徒

がでてからは、また

たく間にそれは

『噂』になった。

それからしばらくの

間、田中きみひろが

塾帰りに幽霊を目撃

したという11時には、
橋の周辺は中学生の

たまり場になってい

た。

白い息を吐きながら

の、真冬の肝試しが

流行ったのである。

でも

そんなことも2年に

なってからは、ほと

んどみんなしなくな

った。


噂はもうひとつ

あった。

深夜徘徊(はいかい)

のブタがいるという

ものだ。

これは現実的に

ただの不審者。

いたるところに、

ぺらぺらと『不審者

注意』の文字とブタ

の似顔絵が貼ってある。




 そんなことを知っ

てか知らずか、満月

の気持ちよいひかり

の中をブタは

ぷきぷきっ

と歩いている。ブタ

の皮膚にそっくりの

美しい花は、すっか

り散りきり、季節の

終わりを喜ぶように、
さ緑の葉が
みずみずしく
息をしている。


< 6 / 406 >

この作品をシェア

pagetop