゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚ 夜の端 。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。

ざわざわと

木々が不穏(ふおん)

な公園や、

じっじっ、と音をた

てる街頭や、シャッ

ターの閉まった八百

屋や、命を亡くした

ような自転車の前を、
ぷきりぷきり

通りすぎていく。


ブタに目的地はない。
おそらく、ただただ

歩きたいだけなので

ある。道がここにあ

ることを、自分がこ

こに居ることを確かめながら、ぷきぷき

ぷきぷきぷきぷき

ぷきぷき。空は明る

すぎて、星はまばら

に輝いている。

ブタはずっとうつむ

いていた。それでも

ぶつかる車も人もな

いほどに、これは深

夜のことである。


 そろそろ帰るかな。

水の匂いを感じて立

ちどまり、顔をあげ

る。

 ん?

かすかに鼻をならし、
サングラスでおおわ

れた目をこらす。

婦人服売り場のマネ

キンみたいな、すら

りとして格好良い人

影が、欄干(らんか

ん)に張りつくよう

にして立っている。


えー……と。


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