つむじ風。
その言葉に、俺は鞄を壁に打ちつけた。
「…ちくしょう!」
何をやってんだよ!
俺たち家族は!
何が大学まで行かせたい、だ!
何が学歴が物を言う時代、だ!
そんなくだらない意地のために
こんな惨めな思いをして
こんなにおふくろも兄貴も身体をボロボロにして!
こんな目に遭うなら
こっちに来た意味がねぇだろ!
「亮二…」
おふくろがのぞきこんでくる。
俺は何度も顔を手で拭った。
口にしてはいけない胸の内を
どうにかして静めるために。
「学校、行っておいで」
おふくろが険しい顔で言った。
「……」
何も言わずに俺は部屋を出る。
言えない。
なぜなら、こんな目に遭うのは
親父が死んだからだ。
そしてその親父を死なせたのは
紛れもなく
この俺だからだ。