つむじ風。

町の真ん中を流れる川の土手に上がった。

青々と草が茂る斜面に腰を下ろす。

学校なんて行く気がしない。

よくさぼってここで時間を潰した。

ここには一本の大きな木があって、
影を作ってくれる。

そこに寝そべって
風の音を聞くのが好きだった。

縫い目のとんだ小さな巾着を握ってそうやっていると、いつもおまえの夢を見た。

『葉山博子といいます。
どうぞよろしくお願いします』

あぁ、初めておまえが剣道教室に来た時だ。
おかっぱで、目がくりくりしてて…

今だから言うが、
まるで金太郎みたいなやつだって思った。

『え!新明くん、乙女座なの!?
全然似合わないよね』

いちいちうるせぇやつだな。
じゃあ俺は何座が似合うんだよ?
蠍座?
バカが…

『ミルクコーヒーが好きなの?
顔に似合わず、甘党なのね』

いいだろ、別に。

そういや、こっちに来て飲んでねぇな。
俺だって忘れてたよ、それが好きってことを。

『ねぇ、新明くん…』
おまえさ、いい加減、先輩って呼べよ…

ふいに目が覚めた。

もう少しおまえを想い出していたかったのに。

だから俺はもう一度目を閉じる。

現実から逃げるように。

おまえに会いたくて…

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