つむじ風。
「着いたぞ」
エンジンを切ると、
ずっと頬に当たっていたエアコンの風が止み、ふいに暑さを覚える。
「え…うん」
「おまえ、寝てたのかよ」
「寝るわけないでしょ」
そう言って、シートベルトを外し、
先に車を降りる。
俺も後に続いた。
外の方が、風の流れがあって心地いい。
「この上に展望台がある」
「わかった」
外灯が1本、お情け程度に点いているが、
あまり役に立っていない。
「足元、気をつけろよ」
「えぇ」
おまえは何度かよろめきながらも、
石段を上りきった。
一気に視界が開ける。
「…きれいね」
溜息にも似た柔らかな声が、
風に乗って俺の耳にまで届く。
ここが、おまえが望んだ、
街全体が一望できる場所だ。